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考察
今回204診療所に勤務する医師に送ったアンケートの回収率は約60%であった。しかしながら質問項目がかなり個人的な情報を含んでいることからすれば妥当な範囲と考える。
診療所の評価項目では、設備や人員面など実際に診療所を運営していく上で基本的なことについて高い関心があった。ここで特記すべきは、行政の姿勢である。重視度は高いのに満足度は低かった。このような重視度と満足度のかい離のみられる項目は、勤務する医師にとって潜在的なストレスの原因となりうる。一方機器購入や収入面などは重視度もそれほど高くなく、また満足度も比較的良好であった。これからは、表面的ないわゆるハード面の条件ではなく、ソフト的な環境を重視する傾向が窺える。
住宅の評価項目では、1項目以外すべて平均して高い関心が得られた。その中で満足度の低かったのは、地理的な条件であった。この地理的環境については、診療所評価のほうでもほぼ合致した結果となり、地理的な不便さが問題点として大きいと考えられる。
この他、本調査では勤務医師とともに家族の情報も得られた。この様な個人的な情報について、しかもへき地診療所を対象に行われた研究はほとんどなく、この点でも本調査は独自なものである。この調査の結果として、典型的なへき地診療所勤務医師像としては診療所住宅に家族と居住する、30歳前後の既婚というイメージが浮かびあがってくる。また、家族は総勢で5名までがほとんどであった。このことは地方自治体が診療所住宅を作るときに参考になるであろう。
これまで、へき地における医師確保はなんといっても医師招聘に多大な努力がそそがれてきた。そして一旦医師確保に成功すると、地域医療が確保されたかのごとく取り扱われ、それから長年にわたって勤務する医師、そしてその医師を支える家族のことは見逃されてきた。考えてみれば当然のことだが、どこであれ生活していくにはその世帯の必要に応じた環境が必要である。また、診療所についても医師にとって勤務しやす

 

 

 

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